BikeSim、CarSimおよびTruckSimは、カスタム車両数学モデルを使用します。
VehicleSimモデル機能の中には、3つの製品すべてに存在するものがあります。
ここでは、VS軌道と路面について解説します。
軌道と路面
BikeSim、CarSimおよびTruckSimには、3次元路面サーフェス上のドライバー/ライダーコントロール下での車両運動をシミュレーションするマルチボディモデルが含まれます。この3次元路面サーフェスは、車両が動作する環境の主要部になります。
車両数学モデルや他の移動オブジェクトは、2次元基準軌道を用いて制御されます。元々は内部ドライバーモデルまたはライダーモデルで使用するために提供されたVS基準軌道は、現在ADASシナリオで交通車両や歩行者のような他のオブジェクトの動きを指定するのに使用されています。
VS基準軌道
VS基準軌道は、水平面に存在する連続線で位置と勾配の連続性を持ちます。つまり、稜角がまったくありません。
この軌道は、シミュレーションされるオブジェクトの動きを簡便に指定する方法を提供するのに加え、軌道に近い位置を記述する2次元座標系を定義します。
軌道座標は、ステーションS(軌道に沿った距離)と横方向座標L(軌道からの点の距離であり、点と軌道が交差する線上で測定され、交差する点で軌道に対し垂直)です。
VSソルバーは、メモリ内に同時に最大50の基準軌道をサポートします。
既存の軌道もシミュレーション中に何回でも再定義できるため、実際には使用可能な軌道数に制限はありません。
基準軌道に関連するSとL座標の主なアプリケーションは以下のとおりです:
- VSドライバーおよびライダーモデルは、車両前方にあるプレビューポイントのL座標の絶対値を目標軌道に相対して縮小することにより動作します。
- オブジェクト(交通車両、オンボードセンサーの目標等)は、SとLを用いて軌道に相対するよう設置が可能です。
- 路面の高さおよび摩擦は、指定された軌道に関連するSとL座標で定義されます。これにより、他の領域の情報を必要とすることなく、軌道付近のデータ密度を非常に高くすることができます。
VSソルバーには、Sの関数として横方向座標オフセットLを定義する設定可能関数LTARGが含まれます。
この関数は通常、基準軌道と共に使用され基準軌道の派生版を定義します。例えば、路面中心線を定義する軌道に相対する車線変更操作を指定します。
別の例としては、路面中心線に相対する複数車線を定義します。随時、最大100のLTARGデータセットをメモリにロードできます。
VS基準軌道は、隣接するセグメントのシーケンスです。
例えば右に示す軌道は、ポイント1からポイント2への直線と、ポイント2からポイント3への円弧、そしてポイント3を起点とする直線の3つのセグメントで定義されていることも考えられます。
3種類のセグメントがサポートされています:
- 直線
- 半径または曲率(反転半径)のいずれかで定義される円弧
- X-Y座標のテーブルで指定されるスプライン関数
軌道は、初期グローバル位置(XとY座標)とヘッド角で始まるセグメントから構築されます。
各セグメントは、タイプと1つないし2つの記述パラメーターで定義されます。軌道をアセンブリする際、VSソルバーは連続性を維持し、各新規セグメントの開始位置およびヘッド角が前のセグメントの終了位置とヘッド角に一致するようにします。
VS路面モデル
2001年のCarSim 5.0で導入されたVS路面モデルは、VS基準軌道に関連するS-L座標を使用し、高さジオメトリと摩擦を定義します。
これにより、詳細情報を対象領域(つまり、路面軌道上もしくはその付近)に集中させることができます。
3次元サーフェスは最大50の路面サーフェスの集合体として定義され、各路面サーフェスは2次元VS基準軌道を用いて定義されます。
各サーフェスの特性は、S とLの設定可能関数で定義されます。その中には、摩擦と2つの高さコンポーネント(データセット)が含まれます。
また、ステーションのみの関数として高さのコンポーネントを定義する設定可能関数もあります。
隣接するサーフェス間の接続が指定され、シミュレーションで移動体のポイントが(タイヤ接地点、移動オブジェクト位置等)自動的にサーフェス間を移動できるようにします。
あるいはVSコマンドを使用し、1つのサーフェスから別のサーフェスへと切り替える、または既にメモリ内に存在するサーフェスの特性を再定義することもできます。
VSブラウザーは、路面データセットを使用して自動的にアニメーター形状を生成し、路面ジオメトリと車両運動との関係をアニメーションで視認化できるようにします。
路面粗さ
粗さプロファイルは、特に車両が直線軌道を追従していない場合などに、3次元サーフェスを完全に描くために必要な膨大なデータ量を要することなく、現実的な路面粗さ入力をシミュレーション試験で使用できるようにします。
これには、道路管理機構によって定期的に測定されているデータ、または乱数発生器からの適切にフィルター処理されたノイズで生成されたデータを利用できます。
「wandering profile(走性プロファイル)」は、移動距離の関数として定義される高さZのインクリメントとして定義されており、移動距離は前輪の前進速度を積分し、車軸間の距離を追加して他の車軸の入力遅れを適切に取得することにより、数学モデル内で計算されます。CarSimとTruckSimモデルには2つの、BikeSimには1つの走性プロファイルが含まれます。
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